ショートストーリー③

スマホを手に取り画面には

メッセージが表示されていた。

 

それは同じ会社の30歳営業からだった。

「今日、ランチでもいかない?

 いい店見つけたんだけど、どう?

 もちろん奢るからさ!」

 

私はふぅんと少しスマホを見ながら息をついた。

特に用事という用事もない。

だからすぐに快諾してもいいものなのだが

なんとなくあまり気は乗らない。

それでも、お昼を奢ってもらえるというのは魅力的ではある。

 

自分の中でふわふわと考えてみたが

ま、いっか。と思い返事をする事にした。

 

「おつかれさまです。

 お昼空いてるので大丈夫ですよ。」

 

などと、味気のない返信をした。

私はスマホを机に置き、洗濯物の続きをした。

 

返事はすぐにきており

ご丁寧に時間と場所が送られてきた。

その文面には家まで迎えに行くよ?

といった事も書かれていたが

そこまでしてもらうのも気が引けるし、なによりそこまで一緒にいたいなんて気持ちがなかったので現地集合にした。

 

そして、程なくして

私は出かける準備をして誘われたお店へと向かった。

 

 

 

時間には割ときっちりしている方なので10分前にはお店近くに到着した。

すると、店の前に彼はいた。

 

彼はこちらに気づき、軽く手を振っていた。

「お待たせしました。早いんですね」

「そう?つか、そっちこそ、早いじゃん!

 まぁ、突然でごめんね、予定とか大丈夫だった?」

 

彼はそう言って私を気遣った。

と、いうよりもある種の社交辞令なのは明白だったが、

とやかくいう必要もないので

大丈夫ですよ。

ちょうどお昼どうするか考えていたので。

とかと言った。

 

お店は喫茶店のような建物で、それほど大きくはないが子綺麗感じだった。

それがなんとなく落ち着く感じだったからいいお店だなぁと思った。

 

2人で席に着くと彼がオススメらしいメニューをいくつかピックアップした

私はその中から、選んだ。

 

 

心の中でため息をつき

やっぱり来なくてもよかったかなぁ。なんて思っていた。

わかりやすい目先の餌に釣られるからいけないのだ。

 

 

何でこんなにも憂鬱なのか。

それはわかりやすく

目の前の人の、仕事の調子はどう?

聞いたよ。最近頑張ってるんだってね。

この前、先方の〇〇がさぁー。。

 

 

別に休みの日だから、仕事の話はしないでくれ。

って思っているわけではない。

接点が仕事しかないから、これ自体は普通のことだと思う。

でも、なぜだろう。

楽しいと思えない。

それはきっと、目の前の相手に人としての好意すらないからだ。

まぁ、適当に相槌を打っておけば、目の前に料理が運ばれてきて

それでハッピーエンドだ。

 

なんて思う。

ふとした時に、自分でもわからなくなる。

自分が何をしたいのか。

何を考えているのか。

それでも、好意を寄せてもらえる。

それ自体は嬉しいのだけども

『好きな反対は無関心』

なんていうが、無関心なところからの好意というのは、こんなにも受け入れにくいのだろう。

 

 

不意に彼の言葉が私に届く。

「〇〇さんって彼氏とかいるのかな?」

 

こんなセリフはいつかは来ると思ってたけれども、タイミングというか、なんというか

なんとなく、血の気が引いた気がする。

 

「いや、いませんよ。わたし、こんなんなんで」

配慮でもなく、適当にあしらっている。

 

その後も、そうなんだ。

好きなタイプは?とか

今まで付き合った人は?とか

そう言うのが増えてきた。

 

表情にも出ていたかもしれないけど

心の中では勘弁してくれ。

って思ってた。

 

すると、ウェイターが料理を運んできた。

私は顔を上げて、見た。

ウェイターは女性で

料理を配膳したのち、私の方を見て

少し苦み走ったような顔で、やれやれ。大変ですね。

みたいにアイコンタクトした。

 

些細なことかもしれないけど

私はそれで、少し心が落ち着いた。

 

 

続く。。。