ショートストーリー(仮)⑤
目の前の少年は
あどけなく、幼稚園にいってるくらいかという年齢に見えた。
もちろん、1人で歩き回るような年齢では無い。
だから、少年というより、小さな男の子。
と言う方がより、しっくりくるかと思う。
そんなことより、その子は周りをキョロキョロと見回し、不安そうな顔で歩くのと走るのと間のようなスピードで動いている。
おそらく迷子なのだろうと思う。
私はとっさに、周囲に子供を探している人がいないか確認してみた。
休日の繁華街。
人通りもそれなりに多い。
それでも、声を出したりしていればわかりそうだが、親の方も、子供がいなくなったことに気づいていないのかもしれない。
どうしたものかと思っていると
大学生くらいだろうか
男性が1人、迷子らしき男の子の元へと駆け寄った。
彼は、男の子と目線を合わせるように膝を折って座るような姿勢でかがんだ。
明らかに、知り合いとかでは無い様子で
彼は男の子にどうしたの?
迷子?
おとうさん、おかあさんは?
などと聞いているようだった。
そんなことに目を向けていると、私は歩くスピードが遅くなっており、ご飯をした彼とは1メートルほど離れていた。
それに気づいた彼は
「ん?どうかした?」と、不安気な表情で言った。
それに私も、少し慌てて
「い、いえ。なにもっ」と答えた。
私の中で、少しモヤモヤした気持ちが大きくなるのがわかった。
きっと彼には、今私が見ていた光景は取るに足りないもので
悪意なく、無視してしまう事象だったのだろう。
それはそれで仕方ない。なんて思いはするが、それが一層、この人への価値判断を下げる事になっていたのは確かだった。
私は、なにも。と、言った手前
慌てる素振りで彼の近くまで歩み寄ったが
頭や視線、音なんかを含めて男の子たちの方に意識が言っていた。
すると、隣にいる彼が言った。
「迷子かな?親は何してるだよ?」
少し面食らった。
彼にも彼らのことは見えていたこと。
それと、何も“見えていない”物言いをしたこと。
親の責任。
確かにそれはそうだ。
自分の子供のことをしっかりと見ておくこと
からは必要な事に違いない。
でも、その責任を盾に、無責任な事言うことは許されるのだろうか?
適当な判断でものを言う事。
私はあまり好きにはなれない。
私は、迷子の子らが気になりながらも
隣の彼について行き、結局は見ないふりをした。
どれだけ文句を言ったところで、行動が伴わなければ、同じではないかと
自己嫌悪になりながらも、どこかで仕方のない事。私には関係ない事だと、思ってしまった。
仮に私が1人で出かけていて
迷子の子に歩み寄った彼のような行動ができたのかは、やはりわからなかった。
そんな事を思いながら
私はそのまま通り過ぎ、目的のショップへと向かった。
続く。