11話

行動の理由は、確かにあるはずだと思う。

でも、それが何かなんて、その時はそこまでは明確にわかっていなくて

それでも、確かな理由はあって。

この不安定なバランスの二つ。

少し、少しでいいから、わかっていけたらいいなと思う。

 

 

 

 

「それで、さっきの迷子の子は、どうだったの?すぐ見つかったって言ってたけど…」

私は先程話した話を蒸し返すように、聞いた。

「あの後は、男の子と一緒に周辺を見てたんですよ。そしたら、近くの雑貨屋にお腹を大きくしたお母さんがいて、それでなんとか、無事にって感じでしたよ」

彼は硬いながらも、話てくれた。

「そっか。でも、大変だったでしょ?

あのくらいの年齢の子って、中々話してくれないんじゃない?」

「あー。それは確かに。

どこいたの?とか聞いても、何も言ってくれなかったんで」

「それでどうやって、親御さん見つけれたの?」

「それは、周りを探していると近くのお店で慌ててキョロキョロしてる人が目に写ったんですよ」

「それで見つかったんだ」

「ええ。ただ。あれ?」

彼は少し戸惑った。

「どうかした?」

「いえ、その時、あの人がお母さん?って男の子に聞いたんですが、わかんないって言ってて、実際はその人が母親だったんですけどね」

彼は謎めいたようだった。

「見えてたのに?わかんないって言ったって事?」

私はその場を連想するように聞いた。

少し沈黙した。

「あっ。そっか。」

「なになに?」

「いや、僕からは見えていたんですけど、店の前に大きめの看板とかがあったので、それで隠れてたりして、男の子からは見えてなかったのかな。とかと思いまして」

「なるほどね。目線が低いもんね。こっちで見えてても、子供は本当に見えてないとかってあるかもね」

「たぶん、そうですね。

あー。少しスッキリしました!」

彼はそう言ってはにかんだ。

「なるほどね。でも、もしそれで見つからなかったらどうしてたの?」

「え?」

私は少し意地悪な質問をした。

「どうしてたんでしょうね?たぶん見つかるまで一緒にいたとか、そういう感じだと思いますけどね。正直わかんないですね」

「そかそか。君みたいないい人に声かけてもらって、あの子はよかったんだろうなぁ」

「そうですかね?

こんな事したの初めてくらいだったので、どうにでもなれ!でしたね」

 

彼はよく笑顔をみせる。

それが、大人のようで、子供のようなそんな表情に好感をもった。

「迷子の子って、本当に不安でどうしていいかわからないから、たぶん、本当に助かったと思ってると思うよ」

彼は気恥ずかしそうにして、コーヒーを飲んだ。

「ところで、何かそういう仕事とかをされてるんですか?幼稚園とか保育園とか?」

「ん?いいや、普通の会社員だよ」

「あ、そうなんですね。

いや、子供に思い入れがあるみたいなんで、もしかしてと思って」

「ううん。単純に個人的なもの、かな?」

「そうなんですね」

彼は不信感を持っているようにも思えた。

「あー、いや、さっきも言ったけど

あの時、何もせずに無視しちゃったから、それが気になって。

それで、こんな事聞いてて…」

なんだか、自分が情けなくなった。

何も出来ず、何もせずにいたのに、ただ知りたい事だけ知ろうとしている自分が。

 

「優しい人なんですね」

 

彼の言葉でハッとした。

優しい人?

いや、どうなんだろう。

私はズルい人だ。

たぶん。

たぶん、それでも前向きではありたいと願っているのだろう。

 

 

(続く